徹底検証 「旅行 vs 旅」 (2004.11)

「旅行」と「旅」。同じようでいて、これが全然別物だと思う。敢えてカテゴライズするならばの話だが。
そもそも「どこかに遠出する」ときの理由は、消極的理由から積極的理由の外出ヒエラルキー順に並べると以下のようになるだろう。

「出張」→「旅行」→「旅」→「探検」

「出張」は、仕事という用事を果たすために行かざるを得ないもの。国内はもとより時に海外をもその範疇とするが、旅行ではなくあくまで仕事。
「旅行」とは、仕事ではなく遊び・休暇が目的で出かけること。里帰りや法事などでの遠出は含まない。
「旅」ももちろん仕事などではないが、「旅行」とはどこが違うのだろうか?
「探検」になってくると、未開の世界にそれなりの装備をもって挑む覚悟までが必要になってくる。
ただのレトリックなんだろうけど、どこまでが旅行でどこまでが旅か、ここの線引きは若干興味深い。

旅行といっても、小学〜高校までの半強制的に日時・場所を決定された上で多人数での集団行動を伴うものから、家族旅行、新婚旅行などの二人以上の旅行まで様々な形態がある。ほとんどの場合は事前に目的地とルートを決め(もしくは決めてもらい)、予定通りに行動する。
そして目的地は大抵の場合、何らかの観光地である。なぜ旅行に行くと人は観光地に行くのだろうか? 

そもそも観光地とは何だろうか。観光地は、なるべくして観光地になった(A 史跡・名勝が中心)ものと、新たに作られた(B テーマパーク、温泉地など)ものに分けることができる。
Aの場合、例えば奇岩や自然風景、寺社仏閣など、元々観光地となるべくしてなったものではないが、その土地の名物・名所として存在し、訪れに来る旅行客に対して土産物屋などが自然に集うようになり、観光地化していったものである。
Bの場合は、そこにエンターテイメント性があるかどうかがその観光地の質を大きく左右することになる。用意されたエンターテイメント性をどれだけ消費できるかが、その旅行の質に直接影響してくる。
エンターテイメントは単独よりも複数の仲間で楽しむことによって増幅される、またはカップルの場合は「シチュエーション」として利用されるため、単独で行動すると「何をしに来たのか」という怪訝な視線を浴びる可能性がある。
そう、旅行地には単独で行くべき場所と、複数人数で行くべき場所が存在する。

例えば温泉。箱根に巨大温泉テーマパーク「ユネッサン」というのがあるが、一人で行くには相当気が引ける。というか恥ずかしい。
ディズニーランドは一人で入る所ではない(気がする)し、東京タワーだって一人で登るものではない(気がする)。
乗馬や川下りにしても、一人で行くのはどうだろうか?

だが修学旅行などで行く場所は、当然大抵が「大勢で楽しむと楽しい」場所であり、名実上大勢で行くことによってエンターテイメントを享受する。もしくはシチュエーションとして機能する。

それが「旅行」であると定義すると、「旅」とはその正反対であることがお分かり頂けるだろう。

まず単独で行動できるスタイル、すなわちそれが「自由」であって、それを楽しむための単独。「シチュエーション」として利用する事などあり得ないため、目的地そのものが旅の目的となり、さらにその時々の気分によって目的は変化する。
なので先のことが予測できないばかりか、不慮の事態に備える準備すら必要となってくる。これは先に挙げたヒエラルキーの一段上「探検」に通じていく部分となる。
不慮の事態(… 予定していた鉄道に乗り遅れる、台風襲来、通行止め・渋滞 など)に遭遇したときに瞬時に最適な対処法を見つけだすことが「旅」の醍醐味、且つ最も難しい部分であると言える。リアルタイムに次の行動を考えることが重要だ。

こう検証してみると、旅行と旅、それらは似ているようで随分と性格の違うものだと気づく。特に「旅」は単独行動メインなので、積極的に行わないとなかなかその機会は訪れないものであると言える。

ということで、一人でよくあちこちぶらぶらしている僕も別にカップルばかりの観光地の中を一人で歩いたりしているわけではないので、そう思ってた人は一度積極的に「旅」しましょう!